2018.09.28
目次
- 秋の味覚、友からの贈り物
- 前回のおさらいと、国民健康保険制度について
- 国民健康保険料について地域比較してみた
- 制度改革でこれからどうなるのか
- 秋の味覚、友からの贈り物
いつもカオスのコラムを読んでいただきありがとうございます。
いろんな食材の旬を大事にしたい、料理が趣味の辻です。
あっという間に9月も終わり、平成最後の秋へ突入ですね。
税理士法人カオスのオフィスがある大阪 南森町界隈はまだまだ暑い今日この頃ですが、スーパーマーケットの食材売り場を覗いてみると、すっかり秋の食材が主役になっていました。
秋といえば、やはり食欲の秋・収穫の秋です。
「秋が旬の食材」と聞いて、皆さんは何を想像しましたか?
鮭?さんま?きのこ?じゃがいも?栗?
秋が旬の食べ物はたくさんありますね、もちろん地域によっても違いがあるのでしょう。
ちなみに私がこの時期楽しみにしているのは、おいしい新米です。
私もかつてはスーパーマーケットでお米を買って、食べていました。
ここ数年は、高知県の友人が自分の田んぼで育てたお米を譲っていただいています。
同じ生産者が育てたお米を食べ続けていると
「今年は、去年より香りがいい!」
「今年は大雨の影響か、少し粒が小さいなぁ」
「ここ数年で最高の出来だ!」
と、年によって味わいに違いが生まれてきます。
作り手の思いや苦労がより身近に感じられて、少し嬉しくなってしまいます。
もう1つ、この時期に楽しみにしているのが「秋の鮎」です。
先ほど紹介した高知の友人が、お米と一緒に天然の鮎を送ってくれています。
一般的には夏が旬だと思われている鮎ですが、、、
春に獲れる10cm以下の小鮎は生姜や山椒を効かせた佃煮に。
夏は鮎の香りを存分に楽しめる塩焼きや、お酢でさっぱりといただける焼き浸しに。
秋は大きく成長した子持ちの鮎を柔らかく甘露煮で。
冬にとれる氷魚(稚魚)は釜揚げにして大根おろしと一緒に。
といった具合に、実はそれぞれの季節や地域ならではの素晴らしい調理法と、それぞれの味わいがあるのです。
秋の子持ち鮎。機会があればぜひご賞味ください、本当に味わい深いですよ。
今年も友人からの美味しい贈り物と、それを育む高知の大自然に感謝しつつ、私どもの繁忙期である冬に向けて英気を養いたいと思います。
さて、今日のコラムは前回の辻コラムで登場した
「国民健康保険料」
についてです。早速みていきましょう。
- 国民健康保険制度について
過去2回にわたって、住民税の地域差を検証してみました。
その結果は
・確かに地域差は存在したが、大きい格差があるとは言えない程度の差だった
という結果でしたね。
ではなぜ地域差が話題に上がるのか?国民健康保険料がその原因だと思われます。
まずは、国民健康保険制度についてざっくりとご説明いたします。
国民健康保険には大きく分けて「市町村国保」と「国保組合」とがありますが、今回は
「市町村国保」
についてご説明したいと思います。
その前に、皆さんは「国民皆保険」という言葉をご存知でしょうか?
中学校の社会の授業でそんな名前を聞いたような…という方もいらっしゃるかもしれません。この言葉について調べると国民健康保険制度についての理解が深まりますから、もう一度知っておきましょう。
日本では1955年頃まで、自営業者や農業を営む人々を中心に、
「国民の約3割程度が無保険者」
という状態で、戦後復興を進めて行く中で大きな社会問題となっていました。
この状況を改善するため、1958年に制定されたのが「国民健康保険法」です。
この法律を根拠として1961年から全国の市町村で国民健康保険事業がスタートし、国民の誰もが、いつでもどこでも保健医療の恩恵を受けられるようになりました。
すなわち「国民皆保険」です。
ところで世界に目を向けてみると、いわゆる先進国と呼ばれる国々であっても、無保険の国民を多く抱える国や、保険医療の大部分を民間保険が担っている国もみられます。
世界一の長寿国である日本。
その柱となっているのが世界に誇れる国民皆保険制度だといえるでしょう。
このような経緯でスタートした国民健康保険制度ですから、加入の対象となる人の代表格は以下のような方々です。
・自営業者や農業、漁業を営む人
・パート、アルバイト等で職場の健康保険に加入していない人
・無職の人
法律では、簡単にいうとこのように表現されています。
「住所のある人は全員国民健康保険の被保険者だよ!でも別の社会保険に加入している人は除きますよ!」
ここで気になるのがいわゆる社会保険で加入する「協会けんぽ」や「組合健保」との違いです。
加入者以外の違いとしては
- 国民健康保険の運営者は市区町村であるのに対して、協会けんぽ・組合健保は全国健康保険協会又はそれぞれの企業の健康保険組合
- 国民健康保険の保険料は、世帯単位で算定するのに対して、協会けんぽ・組合健保は個人単位で算定する
- 国民健康保険には、協会けんぽ・組合健保に存在する「扶養」という概念が存在しない
などがあります。
- 国民健康保険料について地域比較してみた
さて、話を本題に戻しましょう。
国民健康保険料の計算要素には
- 「平等割」:世帯あたりいくら という形で一定額
- 「均等割」:世帯の加入者1人あたりいくら という形で人数に応じて増える
この2つは前回、前々回のコラムでいうところの、基本料金みたいな部分ですね。
- 「所得割」:世帯の所得に応じて算定(所得額×税率)
- 「資産割」:世帯の資産に応じて算定(固定資産税額×料率)
この2つは同じく通話料金みたいな部分です。
以上の4つがあり、これらを組み合わせて計算されます。
なお、市町村によって使用する要素は異なります。例えば資産割については固定資産税との二重課税感があり、廃止をする市町村が増えているようです。
さらにややこしい話ですが、これらの要素を組み合わせて
- 医療分
- 後期高齢者支援分
- 介護分(被保険者に40歳~64歳の方がいる世帯のみ)
の3区分それぞれの保険料を計算し、これらを合算します。
だんだん訳が分からなくなってきたかもしれません。
こんな時は、実際に計算してイメージを具体化しましょう。
では、
・事業所得(事業収入から必要経費を引いた金額)が500万円
・1人世帯の自営業者
・固定資産税を年間10万円払っている
であるAさん(40歳)を例に、どれくらいの違いになるかを検証してみましょう。
(ケース1)税理士法人カオスのある、人情の街大阪府大阪市の場合
(イ)医療分
①平等割 30,964円
②均等割 21,362円
③所得割 (500万円-33万円)×8.19%=382,473円
①~③合計→434,799円
(ロ)後期高齢者支援分
①平等割 11,338円
②均等割 7,822円
③所得割 (500万円-33万円)×2.99%=139,633円
①~③合計→158,793円
(ハ)介護分
①平等割 7,874円
②均等割 9,795円
③所得割 (500万円-33万円)×2.69%=125,623円
①~③合計→143,292円
(イ)+(ロ)+(ハ)=736,884円
(ケース2)カープの優勝に湧く、広島県広島市の場合
(イ)医療分
①平等割 27,220円
②均等割 25,210円
③所得割 (500万円-33万円)×7.71%=360,057円
①~③合計→412,487円
(ロ)後期高齢者支援分
①平等割 8,305円
②均等割 7,692円
③所得割 (500万円-33万円)×2.32%=108,344円
①~③合計→124,341円
(ハ)介護分
①平等割 6,658円
②均等割 8,617円
③所得割 (500万円-33万円)×2.02%=94,334円
①~③合計→109,609円
(イ)+(ロ)+(ハ)=646,437円
(ケース3)富士山を望む紙の町、静岡県富士市の場合
(イ)医療分
①平等割 19,200円
②均等割 24,000円
③所得割 (500万円-33万円)×6.4%=298,880円
④資産割 100,000円×8.0%=8,000円
①~④合計→350,080円
(ロ)後期高齢者支援分
①平等割 8,400円
②均等割 9,600円
③所得割 (500万円-33万円)×2.3%=107,410円
①~③合計→125,410円
(ハ)介護分
①平等割 0円
②均等割 15,600円
③所得割 (500万円-33万円)×2.2%=102,740円
①~③合計→118,340円
(イ)+(ロ)+(ハ)=593,830円
このように、今回例に取り上げた3つの地域を比較すると、なんと14万円以上の差があることがわかりました。
比較的高い地域や安い地域を選定してみたのですが、探せばもっと安い地域、高い地域があるかもしれません。
住民税とは違って、大きな地域差がある国民健康保険料。
ではなぜ住民税と混同されてしまったのでしょうか?
それは、地域によって名称が異なることが原因なのかもしれません。
「国民健康保険税」
「国民健康保険料」
どちらを採用するかは、市町村によって異なります。
「市町村から徴収される税金」という意味では、住民税も国民健康保険税も同じカテゴリーなので、「うちの住民税、他と比べて高いんじゃない!?」という疑問が湧くのは無理もない話ですね。
名前が違うだけではなく、実は根拠になっている法律も違っていて、時効や差し押さえの際の順位にも差異があります。
あなたがお住まいの市町村ではどちらが採用されているでしょうか?
- 制度改革でこれからどうなるのか
いかがでしたでしょうか、今回は国民健康保険制度の地域差について確認をしました。
さて、この国民健康保険制度ですが、今年度(平成30年度)に制度改革が行われています。
「高齢化に対応し、将来にわたって国民皆保険を実現するため。」という趣旨です。
(参考:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/hokenseido_kaikaku.html)
具体的には、市町村に加えて都道府県も国民健康保険制度を担うことになりました。
これによって、
①市町村ごとの激しい保険料の差が緩和される
②同一都道府県内で引っ越した際にメリットが得られる可能性がある
という効果が期待されています。
保険料が上がってしまう地域も出てきますが、地域間格差の是正には仕方のないことかもしれません。今後の動きに要注目ですね。
3回に渡って、住民税と国民健康保険料の地域格差について調べたコラムもこれで完結となります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
引き続き、カオスのコラムをよろしくお願い致します!
辻 圭祐