2017.11.17
「本体価格」「税抜」「+税」
買い物をする時、よくこのような価格表示をみかけます。消費者にとっては、いくら支払えばいいのかわかりにくく、少し不親切なように感じられます。
お店側からすれば、税抜表示で少しでも安さを感じさせられて便利に見えるこの「税抜価格表示」ですが、実はこの表示方法は期間限定と定められています。
数年後には消費税を含めた「税込価格表示」としなくてはいけないのです。
ではいつから「税込価格表示」となるのか?なぜ「税抜価格表示」が認められているのか?
消費税の歴史を振り返りながら見ていきましょう。
・消費税誕生〈平成元年4月1日〉
商品の販売やサービスの提供に対して、3%の税金を納める税金として導入されました。
それ以前にも商品のうち、贅沢品の販売に対しては課税する「物品税」というものがありました。
しかし、商品が贅沢品かの判定が細かく分類されており、とても困難でした。
具体的にみてみましょう。
課税される |
課税しない |
コーヒー |
紅茶 |
ストーブ |
コタツ |
レコード(歌謡曲) |
レコード(童謡) |
レコードについては、歌謡曲に該当するのか?童謡に該当するのか?で同じ商品でも取り扱いが異なること、また時代の需要の違いで取り扱いが変化する商品もあり、消費税導入と同時に物品税は廃止されました。
・消費税5%へ引き上げ〈平成9年4月1日〉
税率は5%に引き上げられました。
しかし、この時はまだ価格の表示の定めはなく、お店によって税抜価格表示と税込価格表示と混在していました。
税込価格表示と税抜価格表示が混在しているため価格の比較がしづらく、また消費者が値札をみて、いくら支払えば購入できるのか分からない状況が生じていました。
・総額表示の義務化〈平成16年4月1日〉
価格表示が異なることによる煩わしさを解消するため、消費税を含めた税込価格表示が義務化されました。
これを「総額表示義務」といいます。
この総額表示の義務化により、消費者は価格の比較もしやすくなり、いくら支払えばその商品を購入できるか値札を見るだけで簡単に分かるようになりました。
しかし、一部の商品については例外的な表示方法も認められました。
「書籍」です。(雑誌を除きます)
「書籍」は価格が商品に直接印字されています。
総額で印字してしまうと、税率が変わる度に商品そのものを変える必要があるからです。
そこで表紙やカバーに「定価:本体○○円+税」と表示し、オビやスリップ(本に挟まっている栞のようなもの)に総額表示する方法が認められました。
・またも税抜価格表示が可能に?〈平成25年10月1日〉
税抜価格表示も可能となる、「総額表示義務の特例」が設けられました。
8%そして10%への段階的な消費税の引き上げの度、小売業者等の事業者は、値札や広告表示価格の変更による事務負担も増えます。
この事業者の事務負担軽減のため「税抜価格表示」も認められました。
ただし、要件があります!
「消費者が商品を選択する際、明瞭に認識できる方法で表示すること」とされています。
具体例をみてみましょう!
〇個々の商品の値札に税抜価格であることが明瞭に分かるように次のように表示する
・○○円(本体価格)
・○○円+税
・○○円(税抜)
〇個々の商品の値札に「○○円」と税抜価格のみを表示し、別途店内の目に付きやすい場所に、明瞭に「店内商品は全て税抜価格です」といった掲示をする
今の不親切な「税抜価格表示」も、こういった時代背景があった中で認められたものと知れば、少しは納得できるのではないでしょうか。
また「総額表示義務の特例」は、平成33年3月31日には廃止される予定です。
事業者の方は直前になって慌てないようにするためにも、今からしっかり税込価格表示への心積りと事前準備をしておきたいですね。
消費税は今後、軽減税率やインボイス方式の導入が予定されており、より複雑になると考えられます。
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